あわたじんじゃのけんぼこさし
粟田神社の剣鉾差し
- 京都府
- 10月



粟田祭の神幸祭では、神輿が氏子地域を巡行するが、これに剣鉾が先行し、神輿の通り道を清める役割を果たす。
剣鉾は長い棹の先に剣先と錺と鈴(りん)を付けたもので、鉾差し1人がこれを持って、剣先を前後に揺らし、鈴を鳴らして巡行する。これらの剣鉾は概ね17世紀頃から製作され、破損と新調を繰り返しつつ、現在まで維持されている。盛期には18基の剣鉾が巡行したことが記録されている。
昭和36年の第二室戸台風以降は居祭りとなり、剣鉾の巡行は行われなくなったが、昭和61年より鉾差し1基の巡行が復活し、平成8年の粟田神社剣鉾奉賛会の発足により、特殊な技術者である鉾差しの育成が進んだ。
現在では、6基の剣鉾が巡行するに至っている。令和2年、「粟田神社の剣鉾行事」として京都市の無形民俗文化財に登録された。
剣鉾は全長が8m程度あり、重さも30㎏を越える。これを鉾差しが、差し革という帯に乗せ、剣先を前後に揺らし、鈴(りん)を左右に振り分け音を響かせつつ歩く。これはたいへん難しい技術であり、粟田祭の神幸祭の見どころの一つである。また、剣鉾を護持するのは主として氏子各町で、それぞれに錺や棹の意匠が異なり、菊鉾、桐鉾などの名称がある。
いずれも工芸品としても優れたものである。神幸祭当日とその前日には、各町で当屋飾りが行われ、剣鉾の様々な意匠を見学できる。